2012年3月11日 追悼・復興祈願祭 祈祷

鎌倉恩寵教会 荒井仁牧師
於:建長興国禅寺



天と地と、そこに生きるすべてのものを造られた神様


 東日本大震災から一年が経ちました。経験をしたことのない大きな長い揺れ、千年に一度とも言われる大津波が、町や村に襲い掛かり、人々の生活を破壊し、多くの尊い命が失われました。繰り返される余震に慄き、暗く冷たい夜を蝋燭のともし火で過ごした日々を、今、思い起こします。家族の声が響きあう家、子どもたちが机に向かい、友達と楽しく遊んだ学校、そして人々の生活を支える働きの場が流され、愛する家族や友人、隣に住む人々、そして仕事の仲間と、二度と会うことができなくなりました。被災者は日常を失った痛みに加えて、共に歩んだ大切な人々を亡くした悲しみを味わい、今日まで過ごしてきました。どうか、地震と津波によって、恐れを抱きながら命の終わりを迎えた方々の魂に、あなたの安らぎをお与えください。天にあって涙拭われ、恐れおののいていた心を、あなた御自身が御懐に抱きしめてくださって、永遠の命の喜びをお与え下さるように、お願いいたします。
この冬、遺された被災者は、仮設住宅や、以前のようには整わない住居の生活、慣れない土地での暮らしに加えて、厳しい寒さに襲われました。一人一人の健康が守られることを、心から祈るものです。特に子どもたち、ご高齢の方々、障害や病気を負っている人々は、健康を保つのに苦労をされています。体の面のみならず、日常生活でも弱い立場に置かれやすい人たちが、少しでも快適に過ごせるように必要な人、物、また暮らすための場所を備えてください。
 原子力発電所の事故によって放射能汚染が広がり、今まで住んでいた所から離れて暮らす人たちが大勢います。故郷を追われる辛さ、悲しさはどれほど深いものかと思います。移動先での暮らしが守られ、少しでも今までの生活を取り戻すことが出来ますように。家族が離れて暮らさなければならない人たちもいます。御心であるならば、追われた場所が生活するに相応しい環境に整えられて、再び家族の温もりを、日々味わえますように。そして、いつの日か故郷に戻れるようにお導きください。
 事故の収束のために、危険な状況の中で働く人たちがいます。その健康が守られて、安全な状態を作り出せるように導いてください。
 私たちはこの事故を通して、日頃は原子力発電所の危険性を十分に心に留めることもなく、豊かな生活を享受してきました。そのために、気付かないところで多くの方々の命や生活を犠牲にしてきたことを思い、自らの罪を悔いるものです。私たちの罪を赦し、生活を改める知恵と勇気をお与え下さい。
 被災者は、復興に向けて、新たな歩みを始めています。しかし、中には先行きが見えずに、なお迷いの中にある人たちもいます。日本人のみならず、海外から来て移住をし、或いは一時的に滞在をし、彼の地に暮らして、被災をした人たちもいます。どうか、あなたが私たちに必要な知恵を授けてくださいまして、共に復興に向けて歩むことが出来ますようにお導きください。
 また、被災をした仏教寺院、神道の神社があります。大切な務めを担う僧侶、神官の方々の受けた痛みは、いかばかりかと思います。地域の人々の心の拠り所として大切な働きを担うそれらの宗教施設が一日も早く復興し、人々の安らぎを与える役割を、再び十分に担えるように導いてください。
 主なる神様、あなたはかつて、奴隷の苦しみの中に置かれたヘブライ人を、モーセによって解放へと導き出されました。また、大帝国バビロニアに滅ぼされたエルサレムの町と神殿を、預言者を遣わし、またペルシアの王の支援によって再建するように導かれました。日本においても、第二次大戦後、焦土と化した各地を顧み、人々が住めるように変えてくださいました。どうか、再びその御腕を伸ばして下さいまして、被災者に復興の力を与えてください。打ちひしがれる人々に命の希望を与えてください。被災者は民族や国籍を超えても、私たちと共に歩む仲間であり、命を分け合う神の家族です。神様の顧みを切に願い求めます。
 今日一日、世界の各地で被災者を心に留めて、祈りが捧げられます。祈りの言葉や形に違いはありますが、慰めを求め、復興を願う思いは一つです。宗教や民族を超えて捧げる心からの祈りをお聞き上げください。


 これらの祈りを、イエス・キリストの御名によって、御前にお捧げいたします。