2012年10月13日 チャリティー・コンサート「祈り」祈祷文
荒井 仁牧師
世界と、そこに生きる全てのものを造られた神様
東日本大震災の発生から1年と7カ月が過ぎました。多くの被災者が、日常生活を十分に整えることもできずに、今日を迎えています。大切な家族や友人、同僚を失った悲しみと痛みを引きずりながら、新たな生活を探し求めて、一日一日を過ごして来ました。仮設住宅での暮らしは、厳しい暑さの夏の間、体力、気力を奪うかのようでした。今まで、地域のつながり、家族の絆の中で暮らしていた人々が、ほどけた結びつきを取り戻すのにも苦労をされてきました。残念ながら、糸が切れるようにして、人生の最期を一人で迎えざるを得なかった人たちがいたことは、私たちにとっても深い悲しみです。孤独のうちに生涯を閉じられた魂の上に、あなたの慰めをお与えください。
被災生活を送りながら、高齢のために新たに住む家を求めることの叶わない人たちがいます。先行きの見えない不安を抱えている心に、あなたがより良い場所を備えてくださって、少しでも平安な時を過ごせるように導いてください。
家も働き場も失って、今なお、今後の生活のめどが立たない人たちもいます。復興の目途が立たない中で、苛立ちと諦めの気持ちが交錯する思いを、あなたが受けとめてください。震災前と同じ条件が整わないとしても、少しでも本人が望む働きと住まいが与えられるように、あなたの御手を差し伸べてください。
家族や友達を失って、辛く寂しく、悲しい思いをして、新たな学校に通うようになった子どもたちがいます。心に深い傷を負いながら、しかし新しい毎日を過ごしています。学びの時と、新しい友達との出会いを通して、神様の慰めと励ましを受け取ることができるようにしてください。
原子力発電所の事故は、今も収束の目途が立っていません。人間の知恵と力では制御できないものを人間は造り出し、しかし、大都市はその恩恵に与って来ました。豊かで便利な生活の背後には、多くの命を危険にさらす私たちの罪が横たわっています。事故のために大勢の人たちが故郷を離れなければならない現実に、深く心が痛みます。人間の犯すこの罪を赦してくださって、解決への知恵と力と勇気をお与えください。避難生活を送る人たちが、大切に守ってきた家、仕事、そして何よりも故郷を取り戻せるように導いてください。また、事故の収束のために日夜、危険を冒しながら働く人たちの健康が守られ、その務めが十分に用いられますように、心から願います。
改めて、地震と津波によって命を落とされた方々を思います。恐れの中に終わりを迎えた魂に、平安と慰めをお与えください。家族や友人、同僚を亡くした人々は、深い悲しみ、痛みを抱えたまま、今日の営みに励まなければなりません。どうか、一人一人の心に、神様の慰めと支えが与えられますように、心から祈ります。
復興への道を少しずつ辿り始めた人たちもいます。一つ一つの働きを祝福して、被災地が再び日常を取り戻せますように。
今日は、被災者を心に留めながら、コンサートを開きます。祈り心を持ちながらプログラムを進めます。あなたがすべてを受け入れ、被災者に寄り添う思いを高めてくださいますように。関わる一人一人の働きを、被災者を慰め支える力として用いてください。
これらの祈りを、主イエス・キリストの御名によって、御前にお捧げいたします。アーメン
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