2013年3月9日 チャリティー・コンサート「祈り」祈祷文
荒井 仁牧師

すべてのものを造られた神様


 東日本大震災から二年が経とうとしています。あの日、大きな揺れと、襲い来る波によって、人々の生活が突如として途絶えてしまいました。一緒に暮らした家族や、働きや学びを共にした同僚や友達との結びつきが、引き千切られました。恐れ、悲しみ、不安、痛みが被災者に襲いかかり、将来を思う余裕すら奪われました。心や体に負った深い傷は今も癒えませんが、それでも今日まで歩んで来ることができました。多くの人たちが、様々な形で被災者に寄り添い、命の温もりを与え続けました。一つ一つの出会いと働きを祝福して下さった恵みを感謝いたします。


 私たちは復興の道のりが、平坦なものではないことを、被災地の現状から知らされています。生活を維持し、社会に貢献するための働きの場、安らかに過ごす住まい、楽しく友人と席を共にする学校が、まだ十分に整えられてはいません。しばらくの時が必要とされますが、私たちに知恵と力を与え、日常生活を一日も早く整えられるように導いて下さい。
仮設住宅暮らしを当分の間、続けなければならない地域が多くあります。その中で、孤独の内に過ごさざるを得ない人たちもいます。あなたが一人一人に呼びかけ、人々との結びつきのうちに過ごせるようにしてください。


 町の再建、移転によって、地域社会を取り戻そうとする努力も始まりました。心の中には慣れ親しんだ町並みが見えていることと思いますが、被災者が望む地域の形成が行われるようにと願います。


 復興への歩みの中で、弱い立場に置かれがちな人たちを顧みて下さい。病を負う人、障碍を持つ人、高齢者、子どもたち、海外から来ている人たちが、外側に放置されることのないようにしてください。


 原子力発電所の事故の収束は、私たちの目には見えてきません。多くの人々が避難生活を余儀なくされ、家族も離れ離れになっています。それぞれの健康と生活が守られますように。家族と離れて暮らすことで、寂しさを覚える人々に、慰めと支えをお与えください。放射能の問題は、人間の驕りと罪を明らかにしています。大都市の生活を支えるために、貧しい地域が放射能汚染の犠牲となる構造の上に生きている罪を思います。どうか、あなたの赦しのもとで、安全な暮らしを送れるように、私たちの生活を造り変えて下さい。そのために、知恵を与え、新たな決断を下す勇気を与えて下さい。


 事故の収束のために働く労働者の健康が、少しでも被害を免れるように心から祈ります。


 今日は、被災地で大切な働きを担う、笹野さんからお話を伺います。現地の様子を聞きながら、犠牲者・被災者への祈りを深めさせて下さい。また慰めと復興への希望を届ける調べも奏でられます。演奏を通して捧げられる祈りを、神様がお聞き上げ下さいますように。困難な生活を強いられる人々への、安らぎの響きとして用いて下さいますようにお願いいたします。


 これらの祈りを、主イエス・キリストの御名によって、御前にお捧げいたします。
 アーメン